蒼月の約束

図書室へ着き、いつもの場所に座ると優しい笑顔の王子がエルミアに向かって何か言う前にグウェンが口を開いた。


「この際、はっきりさせておきたいことがあります」

突然のセリフに、みんな一斉にグウェンを見つめる。

「なんだ?」

王子が怪訝そうに反応した。

「今までは短い期間だからと目を瞑ってまいりましたが、ミアさまが残ると決心された以上、今後は規律をきっちり守って頂きたいと思います」


突然の規律の順守発言に、みんなしんとする。


「王子の寝室に入るなど言語道断。同じ寝所を使うなど持っての他です。今後は一切認めません」

「でも…」

戸惑いながらもサーシャが口を挟む。

「ミアさまは、王子と眠る時に予言を見るのでは…」

「その通りだ。ミアの予言能力は、私たちには不可欠だ。予言を聞くためだ。そこは大目に見てくれ」


予言のため。


その言葉がエルミアの心に深く突き刺さった。

私はそのために必要とされている。

知っていたはずなのに、いざ本人にそのまま口にされると心がずしんと鉛のように重くなる。



「なりません!王子はいずれ王の座を継ぐものであられます。そもそものところ、婚前の王子が、妃候補でもない者と一緒にいる方がおかしいのです!」

グウェンの表情が一層険しくなっていく一方で、王子の顔も怖くなり、とうとう「この分からず屋」と言って王子はその場から立ち去ってしまった。

その後ろ姿をただ呆然と見つめるしかない。

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