蒼月の約束

「君、こんな人から見えないような死角で何してるの?女王に見つかったら(さら)われるよ?」


純粋無垢そうな顔をして、平気で怖いことを言う目の前の少年を見つめた。

「あなた…」

乾いた喉から声を絞り出す。

「レ―ヴ。そういや、君の名前は?」

ベンチに腰掛けながらレ―ヴは言った。

顔をエルミアに向けているが、尖った耳がぴくぴく動いているさまを見ると警戒は解いていないようだ。

「エルミア…」

エルミアも警戒しながら答える。

「みんなにはミアって呼ばれてる」

「そう。精霊の書の問題は解けた?」

長い足を組みながらレ―ヴは聞いた。

「少し…。あなた何者なの?」

一歩ずつゆっくりとレ―ヴに近づく。

「精霊の書も狙っていたし、私が予言の娘だって知ってるし…」

エルミアは、続けた。

「それに、ここにいるエルフたちとは、何か違う」

「そうだね、僕はここのエルフたちとは違う」

そう言った瞳に敵意があらわになったのを見逃さなかった。
しかし、すぐに人懐こい少年顔に戻る。

「こういう暮らしは僕には、合わないから」

「あなた、女王の手先なんじゃないの?」

ずっと気になっていたことをとうとう口にしてしまった。

「言ったでしょ。僕は君の敵じゃないって。それに、僕の居場所はどこにもない…」

「どういうこと?」

エルミアは、レ―ヴから目を離さずに聞いたが、レ―ヴは話題を変えた。

「いいかい。精霊を呼び出す道具は、季節によって見つかるものが違う。闇雲に探しても意味がないんだ。まずは水の精霊から狙った方がいい」

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