蒼月の約束

「お前は、何度死にかけたら気が済むんだ!」

誰かに顔を叩かれて、思いっきり口から水を吐き出した。

ゲホゲホと大きく咳き込む、とようやく空気が肺に入りエルミアは意識を取り戻した。

「あれ、ここ…」

目の前には太陽が落ち始めている、夕焼けの空。


青ざめた顔をした王子と、涙目の三人がエルミアの顔をのぞき込んでいた。

「生きてて良かったです…」

王子より先にエルフ三人が、体を起こしたエルミアに抱き付いた。

「先に帰ったことを一生悔やむところでした」

リーシャが唇を噛みしめながら言った。

「ごめん」

まだ咳き込みながらエルミアは弱々しく謝った。

「あれ…バンシーは?」

「セイレーンは、ミアさまをここに置いて、無事だと分かったら帰って行きました。人前に姿を現してはいけない生き物ですから」

「本名はセイレーンって言うんだ…」

ステキな名前だな、と思っているとポケットに何かが入っているのに気づいた。

「虹色の鱗…」

エルミアが取り出したのを見て、王子が驚いたように目を見開いた。

「入れておいてくれたんだ」

海の方から「ありがとう」って聞こえた気がした。



そのあとエルミアは、コロボックルの集落に立ち寄り、トックに人魚とのラブレターの話をして(トックはかなり恥ずかしかっていたが了承してくれた)、またもや馬に揺られて王宮へと戻った。


一つ目の、精霊の呼び出し道具が手に入った。


疲れ果てていたが、エルミアは心が満足感でいっぱいだった。



< 156 / 316 >

この作品をシェア

pagetop