蒼月の約束
ソファーに腰かけ、食べ始める。

リーシャが言った。


「ミアさま。私どもに敬語はおやめ下さい」

「え?」


パンを頬張りながら、エルミアは首を傾げる。


「ミアさまは、王子のパートナーでいらっしゃいますので」


思わず口から食べものが出そうになった。

「へ?」

「王子が3日間も付き添いで看病されていました。
ミアさまの体温が急激に落ちて危険な状態の時に、自らを使って温めたのも王子ですよ」


恥ずかしそうに口元を抑えながら、サーシャが言った。

とうとう口から卵が飛んだ。


「ええ?そ、そういう…」

そういうことなの?
王子がベッドにいたのは。


突然顔が熱くなったのは、この熱々のカボチャのスープのせいではない。


「はい。ですから…」

未だ楽しそうに言葉を続けようとするサーシャに、手を使って制する。


「も、もういいです」

「サーシャが失礼いたしました。きつく叱っておきますので」


リーシャが申し訳ございませんと、頭を下げる。


「えっと、じゃあ私からもお願い、いいですか?」

「何なりと」

三人が姿勢を正した。


「もっとフランクに接して欲しいです。
私の世話係ではなく、どちらかというとお友達になって欲しいんだけど、だめですか?」


エルミアは自分で言いながら恥ずかしくなって下を向いた。



決して今まで、友達がいなかったから、この状況を利用して友達作りを試みようとしている訳ではない。

決してない。


そして友達が多かった亜里沙がずっと羨ましかったわけではない。

決してない。



「直々に言われてしまっては、断れません」


リーシャが、ため息を吐いて言った。


「しかし、私どもに敬語は、やめて下さいね」

「はい!よろしくね」


ここに来て初めてエルミアが嬉しそうに笑うのを三人は見た。

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