蒼月の約束

王子がいなくなるとすぐに、テーブルに着々と朝ごはんの用意がされる。

そして、近くにいた金髪に赤い花を挿したサーシャが、床まで届きそうな淡いピンク色のワンピースを差し出した。

「これを」

エルミアは、ベッドから出て言った。

「あの、もっと動きやすい服は…」

それから気がついた。

体が軽い。だけでなく、体がかなりほっそりしている。

「私、痩せた…?」

ストレス食いをしたせいで醜くついたお腹の二段のお肉がいつの間にか消えていた。
二重顎が定着していた顔周りも、細くなっている気がする。


部屋を見渡し、キャミソールのような薄いネグリジェのまま鏡を探す。

「嘘…。メガネかけてない…」

長時間のパソコン業務のせいで、どんどん視力が落ち、分厚い眼鏡が必要だった目には、今やメガネがなくてもはっきりとものが見えるようになっていた。

しかし、一重の瞼や、低い鼻は相変わらずだ。


「聖水を飲まれたからです」


服を持ったまま付いてきたサーシャが可愛らしい声で言った。


「聖水…?」

「はい」

エルミアに服を着せながら続けた。


「聖水は、その方を本来の姿に戻すものです。高熱を出されていた間、聖水を飲まれていたので」


いや、本来の姿ならお母さんの遺伝子も戻って来てくれよ…


未だに低い身長と、天パの黒髪を見ながら、そう思わずにはいられなかった。


「お食事の用意が終わりました」


おそらく一番年上だろう。

お風呂で謝罪したエルフ、リーシャが言った。


「どうぞ、お食べください。何日間も食べられてないのですから」


目の前に広げられた美味しそうな朝食に、お腹が鳴る。

焼きたてのパンに、温かそうな湯気が立ち上るカボチャのスープ。
そして出来立ての卵料理やお肉料理。


「ありがとうございます。頂きます」
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