幻想館-白雪姫-

魔境

由希奈は遠くを見つめていた。



本当は死のうと思っていたが少女の心に触れて、自分自身の身勝手な考えを改めて教えられた。



まだ自分の手に少女の小さな手の温もりが残っている。



彼女は少女の事を詮索しようとは思わなかった。



少女によって救われたものを無駄にしてはいけないから。





そして彼女は決心し階下に戻ろうと振り返った。




そこには見知らぬ男性が立っていた。



「警察の者ですが坂下由希奈さんですね。山根美奈さんの傷害事件の事で署までご同行願います」




由希奈はコクリと頷いて歩き始めた・・・その時!



「ううっ・・・」


苦痛な表情。


下腹部周辺を抑えこみしゃがみこんだ。


着ていたガウンの下が赤く染まっていく。


彼は至急、医者に連絡をとった。


「もしもし、如月です、坂下由希奈が・・・」


その事を部下に連絡する頃には、由希奈は担架でオペ室へ運ばれていた。



外はすっかり暗くなっていた。



・・・長い夜になりそうだ・・・。


如月はそう思った。
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