幻想館-白雪姫-
「お帰りなさい、思いは伝わったようですね」



銀色の髪が揺れた。


「たぶん・・・もう私はこの記憶もなくなってしまうけど、会えてとても嬉しかったよ」



少女は満足していた


「それは良かったですね」



「あの・・・男の子は?」


「ああ、彼ね・・・」


館長さんは髪をかきあげた。


青い瞳が赤く変わる


「アカイ瞳は審判の合図?」



「おや、どうしてそんな事を?」



「さあ・・・何となくかな?」



館長さんは腕時計を眺め、少女に告げた。


「お時間です、小さな天使さん」


「大丈夫かな・・・あの人」



「心配しないで下さい。あとは如月君に任せましょう」



館長さんはそう答えると暗い壁に手をかざした。



ひとすじの光が扉を描いた。


光は次第に弱まり、扉の向こうに道が通っている



「あの少年も後から追いかけて来るでしょう」



少女はコクリと頷いて歩き始めた。



その後ろ姿は、やがて消えて行った。



・・・さようなら、君はまた一歩、神の元へ近づいていくでしょう・・・。



館長さんは扉を閉じた。
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