幻想館-白雪姫-
少年は何もない空間に腰を下ろした。



「本当のあなたの気持ちを聴かせてよ」



「本当の気持ち・・・?」


美奈は女の姿を目でおいながら、隠していた思いをこじ開けようとしていた。



「少年は装飾品の施された手鏡を彼女に渡した。



「あなたはいつも願っていたよね、自分の美しさを」



確かに毎朝、美奈は誰よりも美しくありたいと、鏡に向かって語りかけていた。



自分より容姿のいい女性がいると、妬みを鏡にぶつけた。


いつしか鏡は魔力を持ち始める。


美奈の心は閉じ込められ、都合の良い事だけが優先された。


美奈は自分を見失いつつあった。



「あなたは今、生死の境界線に立っているんだよ」


「私・・・死ぬの?」


美奈は自分が死ぬなんて考えていない。



少年の表情が変わる


「あなた・・・誰なの!」

「あなたが欲しくなかったもの・・・」



美奈は血の気が引く感じだった。



「僕をよく見て」



そう言うと少年は、次第に縮んでいく。


形成されていた顔が歪む。



美奈は口を両手で抑えた。



やがて、少年は胎児の姿に戻った。



「これが僕の本当の姿だよ」



胎児は笑う。
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