妹を溺愛する兄が先に結婚しました
……だけど。私が言いたいのはそれじゃなくて。


「じゃなくて、手紙のことね。まさか、お兄ちゃんが渡していたなんて思わなくて」


「そっちかい。どうでもよくない?」


「よくないよ!昔書いた手紙って、読み返すとだいぶ恥ずかしいからね。

何書いたか覚えてないけど、絶対ポエムとか入れてた」


自分で言っていて恥ずかしくなり、手で顔を隠す。


「まあ、恥ずかしいのはわかるけどさ……。

仮にも初恋の人だよ?昨日の今日なんだから少しは意識してあげなよ」


「……それどころじゃないんだって」


顔を上げて、今度は泣きたい気分になった。


「どういうこと?」


「時原から話があるって言われて、今日一緒に帰ることになったの」


あの後……折部くんを見送った後。

少し時間をずらして帰路に就く途中で、時原から電話が来て、「話したいことがある」と言われた。


折部くんのことで私も話があったから、今日の約束を取りつけた。


一緒に帰るのは今に始まったことではなく、今さら緊張なんてしない。

……わけがない。


何度だってその度にドキドキする。慣れるわけがない。


「一緒に帰るから緊張してるの?やだ、可愛い」


口に手を当ててときめく爽。


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