妹を溺愛する兄が先に結婚しました
だけど、新しい家族は全然違った。

温かくて優しくて、穏やかだった。


お父さんもお兄ちゃんも。

あんなに泣いていたお母さんも、毎日笑っている。


……これが本当の家族なんだって知った。


だからこそ、自分の身体を見る度に思う。

この時の私はなんだったんだろう。


あんなに辛い日々をおかしいと疑わなかった。


私ですら自分のことを哀れに思う。

誰よりも自分の傷に嫌悪感を抱いている。


だから、人には絶対に見せたくない。



「見せられるもん……っ」


強がって、出た言葉。身体が震えていた。


「時原はいい奴だと思うよ。だけど、誰がどう思うかなんてわからない」


……わかってる。

時原は私の傷を見ても、優しい言葉をかけてくれると思う。


わかっていても、人の心は見えない。

どう思われるかわからない……だから、怖いんだ。



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