バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
【物事の始まりは突然に】
「あの~・・・」
何度も声を掛けてきただけじゃなく、さっきは腕も掴まれたし、全くこの人は・・・
「しつこいわね!」
振り返って、男の頬を平手で叩く瞬間
「あっ!」
そう思った時は遅かった・・・
この人、誰!?

「すみません!本当にすみません!」
私は人通りのあるオフィス街で、相手の男性に何度も頭を下げた。
「いえ、私も突然声を掛けたので、びっくりされましたよね」
「それでも、見知らぬ人を叩いてしまって。お時間あればその・・・お詫びとして、赤みが引くまであのカフェでご馳走させてください」
「それでしたら、丁度休憩したいと思ってましたので、じゃあ、ご一緒に」
はぁ・・・罪の無い人を叩くなんて。

私達はカフェの窓際に座り、コーヒーを飲んでいた。
「痛み、大丈夫ですか?」
「えぇ、びっくりしましたけど」
もちろんですとも。
声を掛けただけで、頬を叩かれるんですから。

「すみません。実はさっき、しつこく男性に声を掛けられまして。腕を掴まれて逃げたから、追いかけて来たのかと・・・」
「そうでしたか。声を掛けたタイミングが悪かったですね。実は、このハンカチ落とされたみたいで」
「全く気がつきませんでした。これ、気に入っていたので、助かりました。ありがとうございます。」
「それは良かったです。今って、お仕事中ですか?」
「はい、役所まで行ってまして、その帰りだったんです」
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