バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
「ここの数字、間違ってるじゃないか。修正しないといけないんだぞ!」
席に戻ろうとした時、景山くんが藤井さんに罵声を浴びながら、頭を下げて謝っていた。
「どうしました?」
「どうしたも何も、決算の注記資料の数値、間違っているじゃないか」

景山くんが作成した資料にミスがあったのを、見落としていた。
「景山くん、もういいから、席に戻って。後は私が引き継ぐから」
景山くんが頭を下げて席に戻るのを見て、藤井さんに向き合う。

「私のチェックミスです。景山くんの責任ではありません。直ぐに修正します」
藤井さんは私が頭を下げている耳元で
「だから女性管理職はって言われないようにね」
く~っ!むかつく!でも、ここは我慢して・・・
「藤井さん、本当に申し訳ありません」
そう言いながら、藤井さんの横に行き、周りに聞こえないように
「お詫びに今晩、飲みませんか?」
私は色気を帯びた目と声で藤井さんを誘った。
すると、藤井さんは蛇のような目つきに変わり、鼻の下を伸ばした。
「あぁ、まぁいいよ」
「では、詳細は後ほど」

席に戻ると景山くんが泣きそう顔で近づいてきた。
「すみません、緑川さん」
「あなたのミスは私の責任、私のチェックミスよ」
「緑川さん、やっぱり男前ですね」
「そんなことより、私、今どんな顔になってる」
「鬼ですね」
「景山くん、今日残業してくれる?今から説明するから」

私は、藤井さんを許さない。
化けの皮をはがす決行日は、今日だ。
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