バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
私、緑川奈織(みどりかわ なお)は、「青羽(あおば)設計」の人事課長。
大変ではあるけど、女性活躍の時代もあり、社長や部長の支えもあって、2年前に課長へ昇進した。
今では、社内の人達にも認めてもらえるようになって、凄くやりがいのある日々を過ごしている。

「緑川さん、人材紹介会社の担当さんと一緒に課長さんも来ていて、上長に挨拶したいって言ってますけど、どうしますか?」
「わかったわ。直ぐ行くから」

直属の部下、景山正輝(かげやま まさき) くんは27歳。
私が一から仕事を教えたので、弟のような存在だ。
とても真面目で、最近、従業員からも頼られる存在になってきた。
私自身も信頼している。
淡々とした口調ではあるけど、思いやりがある。
ただ、私には毒舌の景山くんだった。

名刺を持って、景山くんの後に続いてブースまで挨拶に向かった。
「初めまして。人事課長の緑川です。宜しくお願いします」

今の募集案件を伝えた後、景山くんと玄関で2人を見送った。
「ねぇ、あの課長、私の話聞いてたのかな?何かぼーっとした人よね」
「いつもの事ですけどね」
景山くんは笑いながら
「相手の課長さんが気の毒ですよ。無駄に緑川さんが綺麗すぎて、大体の人が見惚れていますからね。見た目は抜群にいいですから。でも僕の仕事が増えてますよ、その分」
「ねぇ、褒めてるようで、悪意あるよね、その言い方」
「まぁ僕がちゃんと営業職募集の件は説明しておきましたので、大丈夫でしょ」

ほんとに上司を何だと思ってるんだか・・・
でも、何故か憎めなく、こんなやり取りも2人の信頼感があるからこそだと、最近、頼り甲斐が出てきた景山くんの背中を見て、自然と笑みがでた。
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