バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
私は照れながら、指輪を眺めていた。
2つ並ぶ指輪がケースに飾られている。
自分には遠い話だと思っていた。

クリスマスの翌週は仕事納めなので、クリスマスの日は拓真とゆっくり過ごせなさそうだ。
今度の土曜日に、プレゼントのマフラーを渡そう。

クリスマスイブの日、19時が過ぎ、携帯に拓真から電話が入った。
「奈織さん、まだ仕事ですか?」
「うん、まだ会社なの。拓真は外出先から直帰したの?」
「えぇ、まだ外ですけどね。それより、そんなに眉間にしわ寄せて仕事すると、早くに老けますよ」
「失礼ね。まだまだよ」
「まぁ、どんな奈織さんでも僕はいいんですけどね。でも、今日はやっぱり奈織さんと過ごしたくて。出逢った時のカフェの前で待ってますから」
「でも、遅くなるから」
「ずっと待ってますから。じゃあ」
この台詞・・・
きっとずっと待ってる・・・
「部長、明日早く来ますので、今日は失礼します」
「あぁ、お疲れ様」
「景山くん、ごめんね」
「緑川さん、僕の存在を忘れては寂しいじゃないですか。明日は普通に来て下さい。あと、残った仕事ください。僕がしますので」
「景山くん・・・私は幸せだよ」
「僕も成長してますから。どうぞ、赤星さんとごゆっくり」
景山くんは小さな声で背中を押してくれた。
景山くんにお礼を言って、拓真の元へ急いで向かった。

カフェの前に行くと、拓真がいなかった。
「またコーヒー買いに行ったかな?」
コーヒーショップを見てもいなさそうだった。
きょろきょろしていると
「お姉さん、1人なら一緒にクリスマス楽しみませんか」
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