絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
[アリシア、なんでそんなに焦っているの?]
[ねえアリシア、遊ぼうよー]

 ほんのりと輝く光が、ふわりふわりと周囲を飛ぶ。その光はゆっくりと地面に落ちると、ぽんっと小さな子供の姿が現れた。

「ごめんね。今、遊べないの」
[なんでー?]
「明日までにお薬を完成させないと、大変なことになっちゃうんだよ」
[大変なこと?]

 手のひらに載るサイズの小さな子供──風の精霊達は不思議そうに目を瞬く。大きな水色の瞳が、こちらをじっと見つめている。

(なんでこんなことに)

 なんの邪念もない瞳を見ていると、思わず涙がこぼれ落ちそうになる。私はこんなこと、一切望んでいなかった。ただ、本当のことを本当だと言っただけなのに。

「うん、大変なこと。だから、もうちょっとだけ待っていてね」

 私は袖口でぐいっと目元を拭うと、努めて明るくへらりと笑う。

[そっか。じゃあ、イリスと遊ぶ]
[イリス、遊ぼうよ]

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