絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
 深夜になって爆音が響き渡り、王宮の一角は大騒ぎになった。
 騒ぎに気付いたイラリオさんが私のいた建物に駆けつけると、そこには散乱した実験器具類、瓦礫の山、そして横たわる幼子(私)が。さらに、部屋にいたはずのアリシアは忽然と姿を消していた。

『まだ若くて未来がある子だったのに、俺がこんなところに連れてきたばっかりに……』

 イラリオさんは沈痛な面持ちで、言葉少なに語る。彼の中では、完全に私は死んだことになっているらしい。

『お嬢ちゃん。お嬢ちゃんはアリシアの妹だよな? 名前は?』
『名前? アリ……、アリエッタ!』

 咄嗟にアリシアと答えそうになり、慌てて即席に思いついた〝アリエッタ〟という名前を言い直す。

『アリエッタか。じゃあ、愛称はエリーだな。お父さんとお母さんは?』

 私は首を横に傾げる。両親はずっと前に亡くなっていると思う。

『やっぱり、アリシアが唯一の肉親だったんだよな……』

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