アジサイナミダ
春、君に出会い
3度目の夏に近づいた頃


薄暗い放課後の教室


それは、あまりにも突然だった。



「ごめん、別れよう」

始まりは一瞬だった。
だけど、終わりはもう少し遅いんだと
ばかり思い込んでいた。

私達の関係は
たった一言で終わってしまう
甘くて苦いものだと思い知らされた。

…私は、嫌。
"ごめん"に応えたくなんてない。


「なんで」

なんで?だって
ついこの間まで手を繋いで歩いていたのに。
好きだって言ったら
俺もだよって笑いかけてくれたのに。


「ごめん、俺の問題だから」

浅いため息を吐き、か細い声がはっきりと


「……気にするな」


時が止まったような
全ての意識が無くなるような
そんな中でも
香る、君の甘い花の香水。

今はつんと鼻を刺す。



「気にするなって…」

夢なのか、現実なのか
言葉が浮かばない。私は今、ちゃんと声を出せているの?


感覚が無い喉。

外から聞こえる小さな雨音が
教室中に響き渡る。


……重い、沈黙と空気。


恐る恐る、君を見上げた。

今だってこんなに近いのに
近いはずなのに
遠くにいるような、そんな感覚で。


大きくて、栗色の瞳に
私は映ってなかった。


「他に好きな人ができた」


しばらくの沈黙の中、小さな声なのに
私にはずっと大きく聞こえた。


私は、ずっと浮かれてたんだね。
全部 全部 私だけだったんだ。


「そ、そっか…」
「楽しかった」


魂が抜けるって、このことをいうんだと
この瞬間 初めて知った。

涙すら出ない、思いっきり泣いてしまいたいのに。

私はまだ好き、思い出にできない。



「でも、私はまだ…」


小さすぎた私の声は届かず
言えないまま、言わせないまま
背を向けられ

君は優しくドアを閉めた。


泣いたら、もっと実感してしまう。
君を失ったことに。

今はもう、この場にいたくない。
……帰ろう。
ただ虚しいだけだ。





ピンク色の傘を広げゆっくりと歩く、
君と歩いた通学路が嫌でも目に入る。

赤色の大きな滑り台が目立つ公園
花壇に咲いている色とりどりの紫陽花


「……紫陽花」

今年は、一緒に紫陽花が綺麗なところに行こうねって言ってたのに
約束ねって、あんなに行ってたのに…、

海にも、プールにも、夏祭りにも。

約束してたんだけどな…、


君を夢中にさせることができなかった。








背負っていた鞄の中を漁り
スケジュール帳を広げた。


無駄に埋まっている、
もう全部真っ白なはずなのに。


スマホの待ち受け画面も
新しく買った洋服も
全部、全部棘のように突き刺さる。


__「俺の問題だから」

__「お前は気にするな」


目が熱くなる、流れてきたのは
雨なのか、涙なのか。
わからなくていい、
こんなにも雨が気が利くものだと思わなかった。





季節変わり、
紫陽花と重なる。

























__心変わり


紫陽花の花言葉









あともう少し咲いてくれていたら、
私がもっと君を知っていたら…、

紫陽花よりももっと咲いていたかった。


私のことなんか見ないで
振り返りもしないで
遠くに行ってしまう

振り返るのは私だけ。



どうしていたら、もっと
同じ気持ちでいられたんだろう。












やけに綺麗な紫陽花が
君の全てと重なり
今はまだ思い出にもできない
どうしようもない私はただ、
涙を流すことしかできない。










< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

好きなのは、嘘じゃない。

総文字数/8,612

恋愛(純愛)9ページ

表紙を見る
君との恋はセーブができない.

総文字数/2,972

恋愛(学園)3ページ

表紙を見る
そんな君だから。

総文字数/1

恋愛(学園)1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop