【完結】甘くて危険な恋の方程式〈捜査一課、女刑事の恋と事件の捜査ファイル〉
「笹野、見てみろ」
門野さんからテレビの画面を指差されたわたしはサンドイッチを口にしながら、テレビに視線を向けた。
「第一回の裁判。被告人は、無罪を主張しているとのことです。被告人の弁護士によるとーーー」
テレビ画面越しから聞こえてくるそのメディアの声に、わたしたちは耳を澄ませた。
「……やはり無罪を、主張しているのか」
小野田課長は、テレビ越しにそう話していた。
「ヤツがやったことに、間違いはないはずですよね?」
と、門野さんが口を開いて課長に問いかける。
「ヤツが犯人で間違いないだろう……。だが、ここに来て容疑を否認してる。弁護士も、ヤツは無罪だと主張しているようだしな」
「……それが、精神疾患?」
「恐らくそういうことだ」
精神疾患が原因で、無罪……。そんなの許される訳がない……。
ヤツがやったことに変わりはない。なのに、どうして……。
「……遺族からは、講義のデモが起きているようですね。死刑にしてほしいと」
わたしはそう伝えると、そのままコーヒー牛乳に手を伸ばした。
「仕方ないさ。……遺族にとっては、家族を殺されたんだからな」