お姉さん、泣いて

OL side




────最悪だ。



ザァァァァァァァ。


激しく降り注ぐ雨の中、ライトを照らして突き進んでいく車の音。


他人が店先で開いた傘にすぐさま襲い掛かる雨粒たちの音。


私はそれらを耳にしながら灰色の空を恨めし気に見つめ、それと同時に自己管理能力の低さに嫌悪感を抱いていた。


「……最悪だ」


二度目のその言葉。今度は口に出た。
私は普段、独り言を言うような癖は持ち合わせていないというのに。


今日の私はとことん情けなくてこんな姿は誰にも見られたくない。


……まぁ、今まで一番近くで私を見ていた人は昨日からいなくなってしまったんだけどね。


思えば昨日の夜から散々だった。


高校の頃から付き合っていた彼氏に突然『好きな人ができたから別れてくれ』と一方的に電話で別れを告げられ、涙も出ないことに驚きつつもぐるぐると思考の渦に飲み込まれた私はなかなか寝付けず、結局眠りについたのは明け方のこと。


はっと目が覚めたのは、いつも家を出る五分前だった。
最低限の支度をして家を飛び出したのはもはや仕方がないと思う。


< 7 / 22 >

この作品をシェア

pagetop