腐女子な女!

「待って!」


「待たない!」


 きびすを返して、全力ダッシュ。


 数歩で出られるはずの図書室の扉がとても遠く感じた。


 図書室から出ても、昇降口に出ても、校門を出ても、ずっと佐倉くんが追いかけているようで、怖くて振り向けなかった。


 ずっと、全力ダッシュをしていた。


 気がついたら、家の中だった。


 部屋の中で、大きなセバスチャンのポスターが私を出迎えてくれていた。


 さすがは一流執事。


 こんなときも、そのにこやかな笑顔は崩してないぜ・・・。


「・・・ただいま・・・セバスチャン・・・。」


 ・・・『お帰りなさいませ、お嬢様』・・・・。


 そんな言葉が聞こえたような気がした。


「はぁはぁ・・・私が男に告られるとか・・・ありえない・・・。」


 そんなことあるはずないと思っていたのに・・・。


 一生、私は二次元の男共に囲まれて暮らしていくと思っていたのに・・・。


 しかも、相手は佐倉くんですよ!


 モデルにもスカウトされて、運動神経も良くて、頭はいいのかどうかよくわからないけど、女子が騒いでいるところを見ると、たぶん頭もいい佐倉くんですよ!!


「でも、セバスチャンには勝てないもん!」


 よく分からない理屈を述べて、私は今日のことを必死に忘れることにした。


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