平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
けれどリズの頭に過ぎったのは、先日の占い師のことだった。魔女よりも、本物の占い師が存在している方が現実味がある。

ジェドとの結婚に不安はない。でも、一生に一度の結婚だ。

大切だからこそ、今結婚しちゃだめみたいに言われたら気になる。それに加えて先程の声は、いったい――。

「お姉さん、何か気にしていることがあるの?」

「えっ? いえ、別に」

さすがに鋭い。リズは咄嗟にはぐらかした。でも顔に出ていたのか、コーマックが気遣うような目で微笑んでくる。

「青い薔薇の商品を気にしているようですが、心配しなくても大丈夫ですよ。いつもの流行りだとすると、一時だけです。これだけ騒がれているとなると、社交に出てている団長も気づいていると思いますし」

そう口にしたコーマックが、急に溜息をもらした。

「とはいえ、あの人なら一蹴するでしょうが」

「どうしてですか?」

リズが焦って尋ね返すと、コーマックは眉を落として切り出す。

「実は、団長はこの手の占いやら迷信やらを信じていません。彼が信じているのは、伯爵家に伝わる約束と伝統――そして〝白獣〟だけです」

現実的な人だとは思っていたが、その他の奇跡的な現象は〝根拠もないから信じていない〟のだ。

先日の、占い師へのジェドの冷たい対応を思い返すと、根っから性に合わなくて嫌っている部分もあるのだろうと思えた。

青い薔薇については、雑談であっても自分の口から言えそうになかった。
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