秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
「寮だよ? ただし、香月専用だけど」

「ええっ⁉」

「大家は俺……あ、この場合は寮監って言った方がいいのか? まぁとにかく、ここは俺の家だけど、部屋なら余ってるから遠慮しなくていい」

「ま、待って……! そんなの――」

「でも、他に住むところなんてないだろ?」

「それは……」

「赤塚の家はもうすぐ引き払うし、仕事はうちに来るとしても、家を借りるなら敷金礼金はそれなりにかかる。ここは会社からも近いし、セキュリティも万全だから」

「で、でも……だからって……」

「それに、ここにいたら香月を助けてあげられる。もちろんずっと住む必要はないし、落ち着いて家を探せるときが来れば不動産屋も紹介するよ」


動揺と困惑で冷静さを欠いた私は、諏訪くんの行動が理解できない。一方で、彼はなんでもないことのように言ってのけたかと思うと、おもむろに眉を下げた。


「赤塚から香月のことを頼まれたし、ここで香月に断られたら赤塚の信頼を裏切ることになるな……」


今の諏訪くんは、まるで捨てられた子犬のような目をしている。そんな顔で見つめられてしまったら、全力で拒否できない。


「男とふたり暮らしなんて不安かもしれないけど、焦って部屋を見つけてセキュリティが万全じゃなかったり、隣人が変な奴だったりしたら困るだろ? ひとまず落ち着くまではここにいて、今後のことはゆっくり考えればいいんだよ」


優しく、当たり前のように説明されると、確かにその通りだと思いそうになった。

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