秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
(で、でも……同居ってこと、だよね? 確かに、敦子にはこれ以上甘えられないし、諏訪くんのことは信頼できるとは思うけど……。だからって……)


仮にも相手は男性で、学生時代には好きだった人。もっと言えば、初恋で、ずっと忘れられなかった人。


(そんな人と一緒に住むなんて……)


そこまで考えて、頭をブンブンと振る。やっぱりここは断るべきだ。


「あの、諏訪くん――」

「とりあえず、仕事のことも説明したいし、コーヒーでも淹れるよ」

「え? いや、あのね……っ」


アイランド型のキッチンに行った彼を追いかけると、優しい笑みを向けられた。


「大丈夫だよ。俺の目の届くところにいてくれた方が守れるし、香月には安心して暮らしてもらえるように努力する。もちろん、香月が嫌がることは一切しない」


真っ直ぐな瞳に、たじろいでしまう。


「それとも、俺のことは信頼できない?」


すると、その一瞬の隙を突くように、諏訪くんが不安そうに眉根を寄せた。そんなことはない、と言うように、咄嗟に勢いよく首を振ってしまう。


「じゃあ、決まり。今日からここが香月の家だ」


ふわりと瞳を緩める彼につられて頷いてしまったのは、その直後のこと。


断るつもりだったはずが、諏訪くんの笑顔を前にすると流されていく。
ずっと災いばかりの日々を送っていたのに……。なぜか突然、初恋の彼との同居が始まることになったのだった――。

< 40 / 205 >

この作品をシェア

pagetop