冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
社長の就任が決まり、初出社の日、澪は再び匠馬の前に現われた。
「神谷です。よろしくお願いいたします」
幸之助のごり押しによってつけられた秘書だったわけで、正直鬱陶しいという思いもあった。そもそも秘書というものは必要なのだろうかと。
だが、澪は常に謙虚で匠馬の思考をくみ取り、仕事をしやすくしてくれた。無駄口を叩かず、ただひたすら淡々と。もちろん、アメリカにいた女性のように、媚びを売ってくることもなかった。
むしろ、なかなかお目見えできない、笑顔が見てみたいという気持ちになっていた。
だから同行先で、澪が肉まんを頬張りながら柔らかく微笑んだのが、たまらなく嬉しく、同時に女として意識した瞬間だった。
(めちゃくちゃ可愛いじゃないか。もっと笑ってくれないだろうか)
無心で肉まんを食べる彼女の横顔を見ながら、そんなことを思っていた。だが澪は簡単には笑ってくれなかった。
それが匠馬の探求心に火をつけ、仕事中も気になって気になって仕方なかった。