冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


なんでも卒なくこなしてしまう匠馬にも、こんな面があるなんてちょっと微笑ましくもあり、ほっこりしてしまう。

初めてのことが多すぎて二人でてんてこ舞いになることも多いが、力をあわせなんとかパパ・ママ業をやっている。

匠馬は仕事が早く終わればお風呂にも入れてくれるし、夜泣きにも付き合ってくれる。なんでも器用に、そして常に前を向いて走る匠馬は、パパ業もあっという間に極めてしまいそうだ。

「準備はいいか?」
「はい」

美雨を乗せ、匠馬の実家へと車を走らせる。こうやってもまた助手席に乗れることすら、嬉しく思ってしまう。

「今日はお二人ともいらっしゃるんですか?」
「あぁ、その予定だ。心配するな。俺からすでに話は通してる。誰にも文句は言わせない。むしろ、親父は喜んでた」
「本当ですか?」
「あぁ、お気に入りの元秘書が娘になるんだ。嬉しいに決まってるだろ」

澪を買っていた幸之助にとって棚からぼたもちだっただろう。気さくで、よく冗談をいう人だった。
でも匠馬と同じでおごらず、常に前を見据えていて、そんな幸之助を澪は心から尊敬していた。その幸之助が義理の父になるなんて、だれが想像しただろうか。



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