冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
そういった界隈の人たちは会社のために結婚をする。それは生まれた時から植え付けられていて、当たり前だと思っているのだとか。
匠馬もいつか……そう思うと胸が苦しくなった。はなから住む世界が違うのだ。
これ以上見ていられず、澪は少し外の空気を吸おうと会場を出た。するとちょうど入ってこようとした人と、ぶつかりそうになった。
「すみません」
「いえ、こちらこそ……って、あれ澪さん?」
名前を呼ばれ、知り合いだと瞬時に悟った澪は、仕事の顔を張り付け頭を上げる。だがすぐに顔が曇った。
「やっぱり澪さんだ。何してるの、こんなところで」
「林田さん……」
「あ、そっか。社長秘書してるって言ってたね。へぇ、偶然だね」
ノー面のような顔で立ち尽くす澪を前に、平然とおしゃべりを続ける。この男はどうして少しも動揺しないのだ。澪にしたひどい仕打ちを、忘れたとでもいうのか。
「あの、林田さんはどうしてここに」
喉がカラカラで、張り付いてうまく言葉がでない。だがなんとか絞り出した。