陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 あたしと渡瀬くんの関係はあの頃から始まった。

 もう一年過ぎてたんだなぁ。


 思い起こすと、首のあたりに熱が集まる気がした。


「っ!」

 ダメダメ!

 学校で思い出したりなんかしたら顔が真っ赤になって熱でもあるんじゃないかって言われちゃう!


 せっかく痕が消えてきたっていうのに。


 ……あ、でも。

 今日は金曜日。

 週に一回の、アノ日だ……。


 意識しない様にと思ったのに、その事実を思い出してしまう。

 ほぼ一年、週に一回している事なのに、全く慣れる気がしない。


 いや、慣れても困る気はするんだけれど……。


 また首に熱が灯る。

 記憶の残滓(ざんし)に頭まで(とろ)けてしまいそうになった。



「フーン。……ま、それはそうと」

 気のない返事に意識が現実に引き戻される。

 顔、赤くなる前で良かった……。


「英語の点数、何点?」

「……」

 ここでその話に戻るんかい!

 というセリフは心の中に留め、あたしは呆れた目で花穂を見る。


「それならまず花穂の順位見せてよ。あたしの見たでしょ?」

「ん? んー。ま、いっか。はい」

 しっかり点数のところだけを手で隠して花穂は順位を見せてくれた。



 71位。


「……」

「ど? あたしの中ではまずまずってトコなんだけど」

「これは……コメントに困る順位だね……」


 心の中では『人のこと言えないじゃん!』と叫びながら、あたしは息を吐いた。
< 3 / 205 >

この作品をシェア

pagetop