陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 はじめこそは緊張していたし、遠慮もしていた。

 でもいつも家族同然に受け入れてくれるから、いつの間にか甘えてくつろいでしまっている自分がいた。


 陽呂くんの家はほのぼの陽だまりみたいな雰囲気。

 あたしは自分の家が嫌いなわけじゃないけど、やっぱり一人でいると寂しくなるときもある。


 だから、たまに陽呂くんの家に来るとホッとするんだ。

 おじさんとおばさんも優しいからね。


 でもこの二人の間の息子なのに、どうして陽呂くんはあそこまで陰気に育ってしまったのか……。

 謎過ぎる。


 すぐにおばさんが飲み物も持ってきてくれて、あたしは二人にもてなされながら他愛のない世間話をする。

 そうしているうちに陽呂くんが二階から下りてきて、「……はよ」と小さくおばさんたちに挨拶をするとあたしの隣に座ってソファーにその身を預けた。


 陽呂くんはいつもそんな感じで、一緒にいてもおばさんたちとあまり話さない。

 でもおばさんたちいわく。


「美夜ちゃんがいないと一階に降りてすらこないからね」

「挨拶も美夜ちゃんに言われてやるようになったし」

 とのことだ。


 まあ、陰気な陽呂くんにはこの二人の陽気さはキツイのかもしれない。
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