陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 ピンポーン

 呼び鈴を鳴らすと、すぐにおばさんがドアフォンに出てくれた。

『美夜ちゃん、ちょっと待ってね。今開けるから』

 そう言われたけれど、ほとんど待たずにドアは開けられる。


「お待たせ。さあ、入って入って」

 少しふっくらした体型の可愛らしい女性がそう言って中に招き入れてくれる。


「お邪魔します」

「リビングの方で待っていてちょうだい」

「はい」

 言われて、あたしは勝手知ったる――と言うほどじゃないけれど、すでに何度もお邪魔して慣れているので一人でリビングの方へ向かう。


 陽呂くんへの相談は後の方が良いよね。

 時間的に安藤さんが来る頃だし。


 そう考えながらリビングのドアを開けると、陽呂くんのお父さんがソファーに座っていて笑顔で迎え入れてくれる。


「いらっしゃい美夜ちゃん。ゆっくりしていきなさい」

「あ、お邪魔します。ありがとうございます」

 陽呂くんのお父さんは細身で、ちょっとやせ気味の体型。

 おばさんとおじさん二人を足して二で割れば丁度いい体型になりそうだな、と思ってしまう。


 ニコニコ笑顔で迎え入れてくれるので、あたしはいつもその笑顔に甘えてしまう。
< 31 / 205 >

この作品をシェア

pagetop