陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 何がきっかけで変わったかは分からないけれど、もともとこっちが素なんだとか。

 まあ、あたしは今のおじさんたちの方が好きだから良かったけど。


「本当、あなた達は楽観的ですね……。まあ、私もその方が良いと思いますけど」

 安藤さんは苦笑と共にそう言った。


「まあこの様子なら問題はなさそうですね。何か聞きたいこととかはありますか? 変わったことがあったとか」

「変わったこと……」

 聞かれて瞬時に思い出したのは今朝のこと。


 寝起きの陽呂くんに言われた言葉。

『美夜のぜんぶ、俺がもらうから』

 ついさっきのことだから、鮮明に思い出せる。


「何かあったのかな?」

 不自然に黙り込んだあたしに安藤さんが静かに聞き返してきた。

 少し真剣な声音に、勘違いさせてしまったと気付く。


「ちっ! 違うんです! 安藤さんに報告するようなことじゃなくてっ!」

 慌てて否定したあたしの顔は絶対に赤かった。


 助けを求めてうっかり陽呂くんの方を見たら、何だかとても嬉しそうに微笑まれる。
 フワフワの砂糖たっぷりのホイップクリームみたいな笑顔。

 それを見てしまったらもうプシューっと音が出てきそうなほどに頭が熱くなった。

 今なら多分湯気が出せると思う。
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