陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
「えっと、じゃあ失礼します」

 何となく一言断りを入れてから陽呂くんの胸に身を寄せた。

 そのままあたしの背中に腕が回って来て抱き締められる。


 硬い胸板と、細そうに見えるのに結構力強い陽呂くんの腕にドキリとした。


 今朝だってこの腕に抱きしめられていたのに、どうしてこんなにドキドキしちゃうんだろう?


 あたしのドキドキが移ったかのように陽呂くんの鼓動も早くなっている――ような気がする。

 今彼がどんな顔をしているのか確認したくて顔を上げると、切なそうな……でも真剣な表情をしていた。

 その目には確かな熱が宿っている気がして……。


「陽呂くん……?」

 呼びかけると、そのまま唇が落とされた。


「んっ」

 しっかりと塞がれた唇は中々離れることは無くて。

 鼻で息をしているとはいえ、ただでさえドキドキしているからすぐに酸素が足りなくなる。


 仕方なく口で呼吸をしたくて唇を開くと、当然のように舌が入ってきた。

「んあっ」

 隙間が出来て合間に呼吸は出来るようになったけど、キスは深くなるし心臓はさらに早くなるしで酸素が足りないのは変わりない。

 熱くなってきた体を陽呂くんはさらに強く抱き締める。


 陽呂くんの体も熱を持ってきたのか熱い。

 どっちの体がより熱いのか分からなくなってきたころ――。
< 44 / 205 >

この作品をシェア

pagetop