榊一族
「お姉様ぁ、お母さまが呼んでらっしゃるわ。」

えりさんだった。

「あ、今伺います…では、失礼します…」

長女は音を立てずにすっと行ってしまった。

俺はしばらくぼーっとしていた。


「大丈夫?探偵さん。どうかなさったの?」
「え?あ、はい…」

えりさんの甘い声で俺は現実に返った。

「ウフフ、綺麗な方よね、お姉様。」

えりさんは長女が去っていった方向を見て言った。

「ええ…」

「気づいていらっしゃる?お姉様、あなたの目を見れないってこと。」

「え?なぜですか?」
「美鈴さんに似ているからよ、探偵さんが。それをお姉様が一番敏感に感じ取ってるわ。」

…そうだろうと思った。

俺は絵を見た。

間違いなくこれは長女だ。

「それは?」

えりさんは俺の手に持っている絵を指した。

「たった今美鈴さんの引き出しを見ていたら見つけたんです。この絵の人物は桜子さんですね。」

えりさんが絵を持って覗き込む。

「…お姉様だわ。」

えりさんはきっぱり言った。

ということは、美鈴さんと長女は何か関係があったに違いない。

< 73 / 136 >

この作品をシェア

pagetop