GET BACK TOGETHER
背中に冷たいものが流れるのを感じた。

俺は手に持っていたプリンの入った袋をベッドに放り投げた。


「高遠君はあっち、私達は反対方向探すから!」

指を差して合図した焦った顔の榊原。

「あぁ!」

首を縦に振ると、扉の前で俺達は背中を向けて駆け出した。


絵麻、早まるな!


辺りを見渡しながら探すけれど、何処にも絵麻はいない。


「院内は走らないで下さい!」

ナースに注意されてしまい、仕方なく早足に速度を緩める。

心臓は変な音を響かせている。


絵麻、何処にいる!


その時、非常口に向かう女性が視界の端に入った。

パジャマ姿のショートヘアの女性。

過ぎ去ろうとしたが、足を止めた。

俺は振り向いてもう一度しっかりと見据える。

後姿しか見えないけれど、きっと絵麻だ。

六年前、あの髪を見なかったらきっと気付けなかった。
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