冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「っぷはぁ!まり子しゃん、もう一杯!!」
「…まり子さん。千聖に飲ませたのって…」
「アルコールなし、麹100%の甘酒…の、筈です…」
「「……」」
改めて甘酒が入ったペットボトルを2人で確認するも、やはり「アルコールなし、麹100%」と書いてある。
「まり子しゃん!仁たんっ!楽しいねぇっ!!」
なのに、わたしは何故かベロベロに酔っ払っていた。
「誰が仁たんだ。誰が。なんでアルコール入ってないのにそこまで酔えるんだよ」
はあぁぁ。と、重いため息を吐いた仁さん。
「しょれはぁぁ!!わたちにもわかりまっしぇ〜んっ!!!」
グイッとペットボトルに入った残りの甘酒を一気飲みすると、どうやらそのまま気絶してしまったらしく。
気が付いたらソファーに寝かされていて、わたしのお気に入りの薄ピンクの桜柄の毛布が掛けられていた。
「…仁さん、」
「気が付いたのか。気分、悪くないか?」
仁さん、ずっと隣に居てくれたのかな。
よいしょっと上半身を起こすと途端に襲ってきた激しい頭痛。
頭を押さえてソファーにうずくまると、仁さんは何とも言えない感じで
「どうしたらアルコール入ってない甘酒で二日酔いになるんだ…」
と、わたしとは全く違う理由で頭が痛いようだった。
「あれ?まり子さんは?」
むぅと来て仁さんから視線を外せば、まだ勤務時間内の筈のまり子さんの姿が見当たらない。
「あぁ、なにか大事な物を自宅に忘れてきたみたいでいったん帰ったよ。明日でもいいのではないかと行ったのだが、どうしても今日中に千聖に渡したいんだそうだ」
「わたしに、ですか?」
「そうみたいだ」
「なんだろう?」
「さぁな。私にも見当がつかん。…それよりも何か飲むか?」
「あ…、じゃあ、あの、冷水を一杯いただけますか?」
わたしが遠慮がちに言えば、仁さんはすぐさま席を立ち冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターを出し、グラスに注いで持って来てくれた。
「あ、ありがとうございま…っ」
感謝しつつそのグラスを受け取ろうとしたのに、仁さんにヒョイとかわされてしまった。