冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
お義父さんの情報とナビを頼りに出発して山をやっとふたつ越えた頃にはもう日が暮れていた。
それでもわたし達は車を走らせた。
すると、車1台通るのがやっとなぐらい細いトンネルが姿を現し、わたしと仁さんは頷き合いトンネルを突き進んでゆく。
延々と続くんじゃないかと思ったぐらい長いそれをやっと抜けて、そこで見たのは僅かな明かりでそこに在るという事がギリギリ分かるぐらい小さく暗い集落だった。
ーーここに、まり子さんが。
わたし達はまず村人を捜してまり子さんの情報を得ようとしたけれど、まず村人が外にはひとりもいない。
こんな暗いんじゃ当たり前かも知れないけれど、それにしたって…。
失礼かも知れないけれど、誰かのお宅にお邪魔してでも聞かなくてはーー、
そう思った時、仁さんが何かに気付いて車を停めた。
「ーー仁さん?」
「…あれ、まり子さんの車じゃないか?」
「え、」
仁さんの視線を辿るとそこにはピンクの軽自動車がとある民家の駐車場にあった。
わたし達は車を降りて、持ってきた懐中電灯で軽自動車のナンバーを確認する。
「まり子さんの車で間違いない」
「お前らっ!何してるっ!!」
いきなり男の人が大声を上げながらこちらに走り近寄って来て、わたしはビックリして仁さんの背中に隠れた。
「まさか車泥棒じゃねぇだろうなぁ!?警察に突き出すぞっ!」
「敷地内に無断で入ったのは謝ります。すみません。ただ、ここに停まっているのはわたしの「母」の車のようなので。わたし達は「母」を探しにここまで来た者です」
「母だぁ?おめぇ、名前はなんて言うんだ」
「室井仁と言います」
仁さんが名乗ると男の人は驚いている感じに見えたが、なんせ暗いから表情さえよくわからない。