相思相愛マリアージュ（前）～君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です～

俺は腰を上げて、診察室を飛び出した。

丁度のロビーの待合で車椅子に乗った高屋副社長夫人と鉢合わせした。

「えーと…貴方が高屋副社長夫人ですか？」

「あ、はい…」
「産科医の槇村奏弥です…よろしくお願いします…」

「いえ、こちらこそ…」

車椅子を押していた救命看護師の村上さんからカルテを受け取る。
「後は俺が押すから…君は救命に戻って」
「あ、はい…後はお願いしますね…槇村先生」

村上さんは救命に引き返す。
俺がその場でカルテを見て、彼女の怪我の具合を確認する。
付き添いの眼鏡の男性に見覚えがあったけど、名前を思い出せなかった。

「俺が診察室まで、押して行くので…貴方は待合でお待ち下さい…」
「わかりました」


男性を待合で待たせ、診察室まで車椅子を押して行った。