敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「ひとまずこの話は明日まで保留だ」

「うん」

仁くんに私は同意した。

そこでふと、彼が出張帰りなのを思い出す。

「仁くん、おなか空いてない? 簡単なものでよければぱっと作ろうか?」

少し希望が持てたことで、落ち着いて訊けた。

「いや、食事は必要ない。風呂に入る」

仁くんは私の手を握り、バスルームへと歩を進めた。

必然的に私も一緒に連れて行かれるかたちになり不思議に思っていると、脱衣所で衣服を脱がされそうになり、私は慌てる。

「私も入るの?」

「ああ、言っただろ。離れたくないと」

「でも」

「なにもしない。今の美玖の気持ちは理解しているつもりだ。ただそばにいてほしい」

仁くんは私がいきなり実家に帰ったのがよほどショックだったらしい。片時も離れまいとする姿に、どうしようもなく心を揺さぶられた。入浴なんてほんの短時間なのに、今の仁くんには耐えがたいようだ。

幸いバスルームは広く、ふたりで入ったところでスペース的には無問題だ。

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