敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
遡ること二十八年前、私たちは親同士が友人で、私が仁くんと三歳差で生まれた際に将来ふたりを結婚させようと口約束を交わしたらしい。

だが深い意味などなにもなく、ただのその場のノリだろう。

自由恋愛が叫ばれる昨今、上流家庭でも許嫁などめずらしいのに、私たちの家は一般家庭なのだ。

私は自分の意思で結婚相手を決めたいし、仁くんも親の話など軽く聞き流せばいい。なのに彼はこの年齢になってもそれを実行しようとしている。

「許嫁にこだわっているんじゃない。俺は美玖が好きだと何度も言っているだろ。だから美玖の気持ちが俺に向くのをこうしてずっと待っている」

そんなふうに訴えられても、どうして仁くんが私を好きなのか謎だった。

幼い頃ならまだしも、仁くんは今や大企業の社長で、私とは住む世界が違う。

商社で働く平凡なOLの私は前野さんいわく、容姿も『素材は悪くないんだけどな』という感じでいまいち冴えないし、なんの前置きもなく褒められるのは色素の薄いロングヘアと白い肌だけで、仁くんとは釣り合わない。幼なじみでなければこんなふうにそばにいることすら叶わないだろう。

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