敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
実家に帰らせていただきます
次の日の朝、なんとか平静を装って仁くんを海外出張に送り出した。

フライトを一便早めることになったらしく、少しバタバタしたのもあって、気持ちが紛れたところもある。

でもそのせいか、毎日出勤時にしていたキスがなかった。

時間に追われていたからだと思っても、仁くんはもう私に興味をなくしたからしなかったのではないかと、悪い方向に心が引きずられてしまう。仁くんの一挙手一投足を勘繰り、感情が乱された。

このままでは一週間後に帰国した彼に、ひどい言葉を浴びせてしまいそうで怖くなる。

仁くんは元々、あまり電話をしないしメッセージも送ってこない。

だからこの出張中もほとんど連絡はないだろう。

知っていてもそれが余計に不安を煽り、ひとりで過ごしていると悶々とするばかりだった。

仁くんがドイツに旅立って三日が経った頃、私は実家に帰ることにした。

仁くんには【しばらく実家に帰るね】と書き置きを残す。特に理由は書かなかった。

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