白球姫。
「ここ座って」
かろうじて聞こえた男性の声。
私はベンチに座る。
暗転した視界はボヤボヤと見え始める。
「これ飲める?」
助けてくれたと思われる男性の声は
左隣から聞こえる。
ゆっくりと左を見る。
制服を着た男子学生は
ペットボトル350mlのホットほうじ茶を
こちらに渡している。
状況が理解できずにいる私を見て
「そこの自販機で買ったやつだから
大丈夫だよ」と笑っている。
受け取る前に私はリュックから
財布を取り出す。
「大丈夫だから飲んで?」
支払いを断られ私は会釈して
ほうじ茶を受け取る。
ほうじ茶を1口飲んでみる。
特別喉が渇いていたわけではないが
暖かさが染み落ち着きを取り戻してきた。