君の言葉で話したい。
「大丈夫。すぐ終わるから、
待っていて。」

切なそうにこちらを見る蒼太に、
後ろ髪を引かれながら、
裏口からバックヤードに入った。

店長は、鈴を見つけると、
露骨に厄介者を見るような目をして、
事務的に書類を受け取った。
その際に一緒にエプロンも返却する。

卵黄がシミになってしまった、
鈴のエプロン。
洗濯はしてみたものの、
やはり跡が残ってしまった。

そのエプロンをしかめ面で、
つまみあげると、
店長は、
手続きは終わったから、
早く行ってくれと、
急かしてきた。

鈴は、形式上の挨拶をし、
その場を後にする。

帰る間際、
もう自分の名前が載ることがない、
休憩室のシフト表が目に付いた。

4年間続けて、
ようやく教育係を、
任されるほど、
信頼されていたのに、

終わりは笑ってしまうほど、
呆気ない。

思わず自嘲した。
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