俺がお前を夢の舞台へ
「何それ…。勇翔はおかしいよ…っ。なんでそんな淡々としてるの…!?蒼空が死んじゃうかもしれないんだよ…!?」


どんなに訴えても、勇翔は顔色一つ変えなかった。


怖いくらい真っ直ぐな瞳も変わらない。


強い風が吹きつけ、落ち葉が舞う。


「…アイツに頼まれた」


視線を落とし、手にもったバットを見つめる勇翔。


勇翔は、一言一言を噛みしめるように口に出す。


「彩絢を…橘を、甲子園に連れていってくれって。アイツは俺に頭を下げた」


蒼空が……。


あんなに勇翔を嫌っていた蒼空が…?


「自分はもう野球を続けられない。もう甲子園を目指すことはできない。だけど…だからこそ、アイツは俺に夢を託した」


そして、勇翔はこっちを見てニコッと笑った。


「そんな奴が易々と死ぬと思うか?アイツのしぶとさは彩絢が1番知ってるだろ?俺が夢を叶えるまでは意地でも死なねーよ」


そう、笑いかけてくれたんだ。
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