俺がお前を夢の舞台へ


─501号室
──八神蒼空

入り口にかかっているネームプレートが、蒼空が入院している事実をより確かなものにしている。


心のどこかで、まだ受け止めきれなくて、入院は嘘なんじゃないかって思ってた。


でも、違った。


蒼空は間違いなく病気。


それは変えようのない事実なんだ。


「…ふぅ……」


ノックしようと扉の前に出した拳が震えている。


静かな廊下。


誰も通らない寂しい廊下。


この向こう側に蒼空がいる。


最後にまともに話したのはいつだろう。


最後に笑い合えたのはいつなんだろう。


思い出せない。


でも、もう一度きちんと話したい。


話さなければならない。


謝らなければならない。


何があっても後悔しないように─…。
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