俺がお前を夢の舞台へ
苦しそうな表情で訴えかけてくるのを見ると、涙なんてあっという間に引っ込む。


勇翔が言っていた。


私を不安がらせないために蒼空は黙ってたんだって。


「野球部ね、順調だよ」


不安を掻き消すように笑いかける。


上手く笑えてるかな。


不自然じゃないかな。


「…俺、ダメだな」


乾いた笑いが蒼空から漏れる。


「え…?」


「泣いてほしくないけど、無理に笑ってほしくもない。んなの、ワガママだよな」


蒼空……。


「俺は、彩絢を幸せにできない」


真っ直ぐに突き出されたボロボロの剣が、私の心に突き刺さる。


「…そんなこと……」


そんなこと思ってたの…?


いつから…?


「…ごめんな、心配かけて」


バカだよ。


蒼空はバカだ。
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