鵠ノ夜[中]



「今日からまた、小豆は"わたしの"使用人だから」



また、ふたりが一緒に過ごす時間が増えるってことだよねー?

……そりゃあ、元々ふたりは主従関係にあるんだから、別になんの問題もないはずなんだけど。



「またレイに近づくのが厳しくなるじゃん……」



「小豆さんがいない今がチャンスだと思ったんだけどねえ」



やっぱりこいちゃんとゆきちゃんは不満らしい。

うん、まあそうだよね。特にここ最近のレイちゃんは、どうにも小豆さんと"何か"ありそうな感じがする。……余計なことは言わないでおくけど。



「別に小豆がいてもいなくても変わらないわ。

……さ。今日もあなたたちに手伝ってもらうわよ」



口元に笑みを敷くレイちゃんが昨日よりも明るい顔をしているから、ぼくも思わずにっこりした。

やっぱりレイちゃんは、笑ってくれてる方が良い。




「今日は何を手伝ったらいいの?」



「ふふ。……そうね、"犯人探し"?」



犯人探し? 犯人探しってなんだろう。

もしかしてぼくだけが知らない話かな?と周りを見るけど、みんなも分からない表情を浮かべていた。はりーちゃんは何となく分かってそうだけど。



「ああ、芙夏。

あなたにもお手伝い、してもらおうかしら」



「なになにー?頑張るよー!」



「あら頼もしいわね。

それじゃああなたのクラスに、わたしたちと同じ高校に通う兄か姉を持つ人がいないか、調べてもらえる?」



歳がひとつ違うだけで、ぼくはみんなと同じように手伝うことが出来ないから。

いつもは少しもやもやするんだけど、今回はしっかりとお手伝いできそうだ。



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