鵠ノ夜[中]
「うん!調べるだけでいいのー?」
「そうね、調べるだけで構わないわ。
でももしかしたら、誰かが嘘をつくかもしれないから、それを見逃さないでくれたらとても助かるの」
「うそ?」
どうしてそんな兄姉の話で嘘をつくんだろう……?
気になってそう聞こうとしたぼくの気持ちを彼女は察したはずだけれど、レイちゃんはそれ以上教えてくれなかった。
「もし気になることがあったなら、帰ってきたあと教えてちょうだい。
何も分からなくても差し支えることは無いから、気に病んだりしちゃだめよ?」
「わかったー。しらべてみるね?」
ぼくはレイちゃんのことを、絶対的に信用してる。
だからレイちゃんがぼくに伝えることにはちゃんと意味があって、ぼくはそれに応えたいって思う。
「ねえねえ。聞きたいことがあるんだけどー」
「ん?どしたー、芙夏」
いつものように学校まで送ってもらって、何気ない一日を過ごす。
レイちゃんからのミッションをいつ切り出そうか悩んでいたら、そのタイミングは運良く訪れた。5限目の数学。担当教師が私用で偶然欠勤していることが原因で、自習になった。
「あのねー。このクラスの中で、」
自習のクラスは当然纏まりなんてない。
けれどぼくの長所は、注目を集めるこの場での発言に、何の躊躇いもないってことだ。
レイちゃんに言われた通りの質問を、クラスに投げかけてみる。
理由は適当に、「ぼくもそこに通おうと思ってるんだ」と言っておいた。通おうと思ってるのは事実だし。
「うちのお姉ちゃんが通ってるよ」