隣の不器用王子のご飯係はじめました
というかこれヤバい。もしかしなくても相合傘というやつだ。
近い。とにかく距離が近い。
トクトクと速まる心音が全部聞こえてしまうんじゃないかと思えるほどだ。
遠坂くんは傘を私の方に少し傾けてくれているようで、激しい雨なのに私はほとんど濡れていない。
正直、帰るまでの道中何を話したかというのが思い出せない。
気まずい思いはしなかったから、他愛ないことを色々話していたのだとは思う。
「遠坂くん、本当にありがとう。待ってて、タオル持ってくるね」
とりあえず玄関先まで入ってもらった遠坂くんは、やはりというか、左肩がびしょ濡れだった。
クローゼットから二、三枚タオルを取り出して玄関に戻ると、そこに立つ遠坂くんは、スマホを見て険しい表情をしていた。
「どうしたの?」
「あ、いや……。電車、止まってるらしくて。復旧の見込みなしって……」
「嘘⁉」