隣の不器用王子のご飯係はじめました
び、びっくりした……。
今まで遠坂くんから電話なんてかかってきたことなかったのに。
どうしたんだろう。何か緊急事態でも?
色々な意味でどきどきしながらも、私はどうにか気持ちを落ち着かせて問う。
「どうしたの?」
『小野山さん、今時間ある?っていうか、どこにいる?』
「普通に部屋にいるし時間も大丈夫だけど……」
電話の向こうで、遠坂くんがぜいぜいと息を切らしていることに気がついた。
まるで、電話を掛ける直前まで全力で走っていたかのよう。
『今、外に出てこられない?アパートの前に』
「え?う、うん。わかった」
いったいどうしたんだろう。
不思議に思いながらも、私は手近にあったブラウスとジーパンに着替えて部屋を出た。
時刻は夕方。
9月のこの時間は、もう風がだいぶひんやりしている。
タタタッと急いで階段を駆け下りアパートの外に出ると、私服姿の遠坂くんがそこにいた。
私は軽く手を振って、遠坂くんの元へ走る。