僕が愛した歌姫
「へい……き」


リナは頷き、肩で呼吸を繰り返す。


俺は警戒しながら周囲を見回し、「ここにいたら危ないかもしれない」と、言った。


もしヒロシがあのまま拘束されて俺の事を話してしまっていたら、アパートに押しかけてくる可能性が高い。


「電車で移動しよう」


行き場所なんてない。


どこへ行くのかを決める時間もない。


だけど、ここからどこか遠くへリナを連れて行かなきゃいけない。


「行こう」


俺は再びリナの手をしっかりと握り締めて、歩き出した――。
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