玉響なる風は鳴る
颯はそう言うと、千風に背中を向けて歩き出した。

千風は、無言で颯の後をついていく。少し歩いていると、颯は立ち止まった。颯が立ち止まると、千風も立ち止まる。

千風の視界に映ったのは、半透明になって地面に倒れている志奈だった。

『……志奈!』

千風は、走って志奈に近づく。志奈は千風と目を合わせると千風の手を握り、千風の手に志奈が持っていた扇子を握らせた。

『千風……これを、あなたに託します……もし、また私に会えたら……その時は、返してください……ね……』

志奈がそう言い切った時、志奈の体は完全に消えていく。千風は、志奈に握らされた扇子を呆然と見つめていた。

『……千風、そんな顔をするな。志奈たちには、またどこかで会える気がするんだ……』

そう言って、颯は空を見上げる。千風も、無言で空を見上げた。



「……その出来事から数十年後、僕はふらふらと街を歩いていた時に芽吹と雪の生まれ変わりである葉月と真冬を見つけてねぇ……人間だけれど、力を使えると判断した僕は、葉月と真冬の親に嘘を混じえながらを話をして、渡してもらうように頼んだのだよ……まぁ、前世の話はしてはいないのだけれど……」

颯は話し終わると、俯いている風音に目を移した。
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